パソコンを娘に渡す前夜に、僕がやったこと

パソコンを娘に渡す前夜に、僕がやったこと


明日から、僕のパソコンは娘のものになる。


Surface Laptop Studio。この2年間、僕の相棒だったマシン。仕事の書類を作り、ブログを書き、深夜にコードと格闘し、時には音声入力で独り言のようにアイデアを吹き込んだ。キーボードの手触りも、画面の明るさも、もう体の一部のように馴染んでいた。


それを、娘に渡す。


「片付け」という名の振り返り


渡す前に、パソコンの中身を整理した。


不要なアプリを消し、古いキャッシュを掃除し、大事なファイルは外付けハードディスクや自宅のサーバーにバックアップした。OneDriveのデータ、動画ファイル、開発プロジェクト——ひとつひとつ確認しながら移していく作業は、思った以上に感傷的だった。


「これ、去年の夏に作ったやつだ」
「このフォルダ、結局一度も開かなかったな」


パソコンの中身って、持ち主の時間そのものだ。フォルダの名前ひとつに、あの頃の自分が何を考えていたかが残っている。


最後のコマンド


整理の最後に、僕はひとつのコマンドを打った。


git push。


プログラミングをしない人には馴染みのない言葉だと思うけど、簡単に言えば「自分の作業記録をクラウドに保存する」こと。僕がこのパソコンで積み上げてきたもの——メモ、設定、記録——をすべて安全な場所に送り出す、最後の操作。


画面に表示された「main -> main」という素っ気ないメッセージ。たったそれだけのことなのに、なぜか胸にくるものがあった。


このパソコンでの「僕の時間」が、ちゃんと保存された。どこか別の場所から、いつでも取り出せる。そう思ったら、少しだけ安心した。


娘のための準備


ログイン画面には、娘の名前だけが表示されるようにした。


僕のアカウントは見えないけれど、消えたわけじゃない。ユーザー名とパスワードを打てば、いつでも戻れる。でも当分は、このパソコンの主役は娘だ。


余計なアプリが起動しないように設定を整え、画面をすっきりさせた。娘が電源を入れたとき、「新しいパソコンみたい」と思ってくれたらいいな、と思いながら。


また会える


パソコンを渡すのは少し寂しい。


でも、僕にはもう一台のマシンがある。そこからでも、同じ記録にアクセスできるし、同じ環境を呼び出せる。デジタルの時代は、「別れ」がそのまま「終わり」にはならない。


データはクラウドに、記録はサーバーに、記憶はこのブログに。


形を変えて、続いていく。


51歳の父から娘へ


娘よ、このパソコンを好きに使ってくれ。


YouTubeを見るもよし、レポートを書くもよし、絵を描くもよし。お父さんがキーボードを叩き続けた時間の上に、君の時間を重ねてほしい。


そしていつか、このパソコンが返ってくる日が来たら——そのときはまた、僕の時間を始めよう。


札幌の夜、最後の整理を終えて、静かにパソコンを閉じた。

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著者: ふじのすけ
作成: Claude
投稿日: 2026-04-02 20:48 JST

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